当院での歯周病(歯肉、及び骨の病気)の治療の進め方

当院で実際に歯周治療の際に行う治療の流れをご紹介いたします。
来院時の痛みや状態によっては、その限りではございませんがご参考にいただければと思います。

  1. まずは診察

    まず、お口全体の状態を見させていただきます。
    歯周病の疑いがあったり、歯周病の治療を希望される場合は担当医が患者さんの症状を伺い、お口の中を拝見します。

  2. 説明

    そして歯周病と診断された場合

    について説明致します。

  3. 相談とご了解

    20代から30代で歯周病が軽度の方は医院にて歯の周りの歯石や歯垢などの汚れを落とし、自宅では指導内容に忠実に歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス(糸)等の清掃道具を使い、歯の周りの環境を清潔にします。そして定期検診で長期にわたりレベルを維持できれば結構良好な結果が得られます。

    もう少し年齢が上がり(一部若年者にも見られます) 中度、重度の歯周病にかかっている方たちは簡単に はいきません。
    歯周病の治療に徹底的に取り組むにはかなりの期間を要したり、麻酔を伴う処置を行う場合が有る等、患者さん自身の御協力が必要となります。よって、患者さんの御希望を伺い良く話し合った上でご了解を得て治療を開始していきます。

    治療を開始するにあたり担当の歯科衛生士も決めていきます。そうする事により患者さんの状況を更に深く把握出来ますし、お互いのコミュニケーションも深まります。歯周病の治療は患者さんと担当医と担当歯科衛生士の3人で力を合わせて治癒に向けて頑張っていくことになります。

実際の治療

  1. Step 1 歯周ポケット測定

    歯と歯肉の間には1~2ミリの歯肉溝と呼ばれる溝が存在します。
    歯周病が進むと、この溝が4ミリ5ミリ・・・7ミリ8ミリ・・・10ミリと、どんどん深くなって行きます。
    正常な範囲より深くなると歯周ポケットと呼ばれる様になります。
    この歯周ポケットの深さをプローブと呼ばれる器具を使用して測る事により、それぞれの歯の歯周病の進行具合がわかります。
    同時に歯肉からの出血や歯の動揺等もみていきます。
    1本の歯に対して歯の表側3ヶ所、裏側3ヶ所の計6ヶ所を測定していきます。(6点法)
    ● 1~3ミリ・・・
    正常。
    ● 3~4ミリ・・・
    歯肉炎が考えられるので正しい歯磨きの練習(TBI)や歯と歯の境目をメインとした歯科衛生士による専用の器具を使用しての清掃(PMTC)が必要。
    ● 5ミリ~7ミリ・・・
    中程度の歯周病が考えられるので正しい歯磨きの練習や麻酔を伴っての歯周ポケットの内側の歯や歯肉の清掃(ルートプレーニング)が必要。
    ● 8~10ミリ・・・
    重度の歯周病が考えられます。

    担当医の診断により

    ● 残せない場合・・・患者さんの了承を得て歯を抜くようになります。
    ● 残せるか残せないか微妙な場合・・・残すに当たっては中程度の歯周病と同じ様な治療を行います。
    日頃から歯の清掃に励んで頂いても何らかの理由で歯垢が溜まってしまったり疲労や病気等で抵抗力が落ちた時等、腫れたり痛んだりします。
    その度に来院して頂き清掃をしたり、薬の投与を行う事により一時的に腫れや痛みは治まります。 この歯を残している間この状況を何回か繰り返します。
    その様な点を御理解して頂いた上で三者でよく相談をしたて患者さん自身に歯を残すか抜くかを考えて決めて頂きます。

  2. Step 2 正しい歯磨きの練習

    歯周病の主な原因として考えられるのは歯垢です。この主な原因である歯垢を日頃から除去出来れば歯周病も治癒に向かいますし、治った後も予防に繋がります。その方法として挙げられるのは歯磨きです。
    いくら毎日、歯磨きをしているからと言っても、その方法が間違っていれば意味がありません。又いくら通院して頂いて、こちらで、どんな処置を行っても一時的に症状は治まりますが歯垢という一番の原因が日頃から除去されていなければ歯周病の方も根本的に治すという事は難しくなります。よって歯周病の治療では、正しい歯磨きの方法を覚えて頂き毎日、続けて頂く事が必須条件となります。これは手間も時間も、かかりますので患者さんにとって1番面倒な作業なのですが歯周病の治療にとっては大変大切な事なのです。
    その点を御理解頂き是非、患者さんに何よりも頑張って頂きたい治療となります。
    まず御自分の今迄の歯磨きの方法で、どの位、歯垢が除去出来ているのか実際に知って頂く事が大切です。
    そして鏡で良く観察して問題点を把握して頂きます。そこで、その問題点を歯磨きで改善するには、どの様に磨けば良いか実際に歯ブラシを用いて練習して頂きます。
    磨き方の種類には、いくつかありますが患者さん1人1人に対し最適と思われる方法を御指導させて頂きます。又、歯の表と裏だけではなく歯と歯の間を清掃する事も重要ですので歯間ブラシやデンタルフロス等も御指導させて頂きます。

    • 御自分に合った歯ブラシの選び方
    • 歯ブラシの交換時期
    • 一日の中で、いつ、何分位磨けばよいか
    • 歯磨粉について

    等、歯磨きに関する様々な事柄も指導時には御説明していきたいと思います。
    その他、何でも疑問点が有ればお受けしながらすすめてまいります。
    歯磨きの練習は少なくて1~2回で終了致しますが、なかなか上手に磨けない方は、きちんと習得して頂けるまで、歯磨きの練習を行います。

  3. Step 3 歯周ポケットの中の清掃

    超音波スケーラー、エアースケーラーと言う専用の機械を用いて歯牙の周囲に付着した歯石を除去していきます。機械が入らない細かい部位は手用のスケーラーを用いて手作業で除去していきます。
    その後は二度と御自分の、お口の中が今回の様に汚れてしまわない様、歯磨きに励んで頂く様になります。

    歯周ポケットの深い所迄、施術を行う為まず施術する部位に麻酔を行います。1回の施術で行える歯牙の本数は部位、状態、施術中、施術後の患者さんの負担を考慮して1~4本位迄となります。
    まず専用のキュレットスケーラーと呼ばれる器具を用いて歯の根の表面に付着、沈着した歯垢、歯石に汚染された組織等を、まるで大工さんがカンナをかける様に除去し硬く滑らかで清潔な状態に仕上げます。
    更に細菌に汚染された歯肉も有れば先程の様な要領で、それらを除去します。次に、それらの作業で歯周ポケット内に残された削りカスや細菌を超音波スケーラーで洗い流します。 2~3日は歯磨きの際、歯ブラシが施術部位に当たると痛いと思いますが施術した部位に歯垢を付けたままにしてしまうと、せっかく行ったのに治らなかったり、治りが遅かったり、腫れてしまったりと、良からぬ状況が予想されますので、そっと弱い力で構いませんので、必ず歯垢は取ってあげて下さい。

  4. Step 4 歯垢が溜まりにくく、歯磨きもし易く

    ひとまず歯磨きの練習や歯周ポケットの清掃が終了し歯肉の状態が少し落ち着いた所で必要があれば勿論十分な説明、相談の上、次の内容を行っていきます。

    • 正しい咬みあわせ、力加減で上下の歯が当たっていないと歯の周りに有るクッションの様な役割をする組織や、歯を支えている骨に直接、害が加わり急速な歯周病の進行に繋がりますので異常が認められた部位は少し削ったり研磨したり等して調整します。
    • 長い間プラスチックや金属の詰め物や被せ物をしていると気が付かない内に歯垢や細菌等が付き易くなりムシ歯や歯周病が進行している事が有ります。そうなりますと、ますます歯垢が溜まり易く歯磨きもし辛くなりますので治療し治したり歯周病が落ち着く迄とりあえず仮歯等にしたりします。
    • 動揺が気になるが抜歯を希望されない場合で歯周病が落ち着く迄、その歯自体の負担を軽減したり、患者さんが動揺を余り気にする事なく日常生活を営める様、透明の専用のボンドを使用して両隣の歯と固定します。中には歯を少し削って針金で補強してボンドやプラスチックで固定する場合も有ります。
    • 出来る事なら取り外し式の義歯よりも、固定式のブリッジ等にしたいと希望される方は多いと思いますが歯周病に罹患している状態ではブリッジ等に出来なかったり、仮に出来たとしても砂の上に家を建てる様なもので、その寿命は短くなります。そこで、とりあえず義歯を入れて歯周病の治療を進めていきます。先程、御説明した仮歯のケースも同様に歯周病が落ち着いたり治ったらブリッジや御希望の被せ物に最終的に変えていきます。
  5. Step 5 外科的な処置

    前項で、お話した5ミリ以上の歯周ポケットの清掃は目に見えない歯周ポケットの中を検査結果をもとでに進めていきます。私達も完全に清掃出来る事を目標にしておりますが解剖学的(構造学的)に限界が有りますので、より完全性を高める為に担当医の診断により、もう少し踏み込んだ外科的な処置を、お薦めする事が有ります。健康保険で認められた方法は症状に応じて4種類あります。
    余り怖く感じて頂いては困るのですが歯肉を少し剥がして歯の根を直接、目で見える状態にし清掃をして縫合して閉じるといった内容です。勿論、十分な説明をし、患者さんの同意を得てから行います。施術は麻酔下で行い、だいたい30分~1時間程で、翌日消毒にいらして頂きます。又、数針縫うこともありますので1週間後に抜糸にも来て頂きます。

  6. Step 6 再評価と定期検診

    これまでの一通りの治療が終了致しましたら少し期間を空けて(症状により期間は様々ですが2週間、1ヵ月等)もう1度、歯周ポケットの深さを測定致します。そうする事により改善された部位あまり改善が見られない部位等、治療後の歯肉の状態が把握出来ます。その結果を基に更なる今後の治療の計画を立てていきます。
    改善が見られない場合、例えば歯磨きに原因が有れば再度、歯磨きの練習。あるいは処置が不十分な場合はもう1度、麻酔をして歯周ポケット内を清掃等こちらも、その症状によって様々です。
    ある程度、歯肉の状態が落ち着いている場合は歯肉も改善するのに時間が必要ですので3~6ヵ月空けて頂き、その間、御自宅で歯磨きに励んで頂く事になります。そして3~6ヵ月後いらして頂いた時に再度、歯周ポケットを測定等の検査から始め、その結果により治療計画を立て・・・という様な繰り返しになります。
    完全に歯周病が治癒した方でも車の車検の様に6ヶ月~1年間隔でメインテナンスに来院して頂く事をお薦めしています。
    以上、お話した事は基本的な流れであり、この通り進めて行くのが理想ですが、中には歯周ポケットの深さを測ったり、麻酔をして清掃したりするのは痛いので嫌ですとか、今回は忙しくて通院するのが難しいですとか御意見、御希望が有りましたら、おっしゃって下さい。
    基本的な治療として、歯肉より上の歯牙と歯周ポケット内を少しだけ(1ミリ位を)専用の器具を用いて清掃する事だけは、させて頂き御自宅での歯磨きを徹底して頂く方向へ切り換える等、なるべく患者さんの負担が少なくなる様、考慮していきたいと思います。
    又、定期検診の時期が近日に迫った方には、こちらから御予約をお薦めする、お葉書を、お送りする事も行っております。
    御説明させて頂きましたが、わかりにくい部分も多々みられるかと思います。何か御質問等ございましたら、お気軽に当医院迄、お電話、またはメール(下をクリック下さい)にてご質問下さい。